反復のためのはじまり

ipodで音楽をリピートする。イヤホンをつけると「流し込む」という感が強い。繰り返される音楽を僕はもう知っている。なのになぜ聞くのか。繰り返すのは一つの根元的な快楽だ。Font-da.新しいものは恐怖でしかない。音楽が(また)始まる。聞き覚えた音。それは一つではただの音ですらなく。(前聞いた)リズムを形成する。把握した。心は音より先行する。まだ追いつかないのか。はやく来い。しかしそれはもちろん不可能で。速回しすると別の音楽になってしまうのはそれなりに象徴的だ。僕はリズムが追いつくのをリズムの中で待っている。リズムは変奏される。それはかつて聞いたものと同じものであり今聞いたものと異なるものでありつまりは差異をはらんだ反復でありなによりも動きながら止まっている。音が積み重なって進行する。次の、今と同じ音楽が待っている。全体が一つになってループする。抜け出す方法も理由もない。ずっと「いま」の中にいるのだから。