メモ:『アイドルマスターシンデレラガールズ』

バハムートとゴブリンがいればどちらが強いか、どちらがレアかは明らかだ。織田信長滝川一益でもしかり(歴史よく知らないので滝川はゴブリンの格ではないかもしれませんががあしからず)。たとえば「戦国コレクション」や「神撃のバハムート」はそんな感じの、我々がすでに知っている序列にのせることで自然に、どのカードに価値があるのか納得させる。しかし、人間はみな平等であり、そのような序列は存在しない。けれど、価値の違いがなければ競争が始まらない。よって差をつけなければならない。ここで持ち出されるのが、作品外の事情である。つまり、「アイドルマスター」シリーズに元から存在する765プロ所属とそれ以外の新キャラの違いだ。765プロのアイドルを上のレアリティに位置づけることで、レアリティの高いカード=経験を積み成功したアイドルであり、プレイヤーは好きなアイドルを応援することで成功に貢献できるという現実のアイドルに似た図式が与えられる。ゴブリンがバハムート並の待遇になったりしたら不自然だが、アイドルはみな同じ人間なので、レアリティの昇格が可能である。ここまででわかることは、アイドルがある意味で平等であり、同時にある意味で平等でないことで競争のゲームが成立している、ということである。

カードには外見的価値と内面的価値がある。カードに限らない話だが、外見的価値と内面的価値は比例する(ことを期待される)。
内面的価値はレアリティであり強さになる。シンデレラガールズには現状N,N+,R,R+,SR,SR+の六種類のレアリティがあるが、基本的に([エステル衣装]三浦あずさ+、[戦国姫]小日向美穂+、[スクーリッシュガール]如月千早+の最初から+になっているコラボやアワードでもらえるカード、あと10枚合成のカードは例外)各+は+なしのカードを二枚合成してできるものであって+なしとセットと見なせるので、実質的にはレアリティは三種類となる。弱いRや微妙なSRも存在するが、一般に、レアリティと強さは比例する。手に入れやすいカードが強ければプレイヤーは苦労してレアカードを手に入れようとはしなくなるから、当然のことだ。
外見的価値はカードのかわいさ、美しさ、かっこよさなどである。これを内面的価値と比例させようとすると、どうなるか。強さは簡単にインフレできる。しかし、レアカードのアイドルをノーマルのアイドルよりかわいく描く、というのは難しい。アイドルはみんなかわいいから。そこで、アイドルの外の背景で違いが作られる。NとRは背景がテンプレで統一されているが、SRにはそれぞれ独自の背景がある。これによって状況を描くことが可能になる。たとえばテンプレの背景で水着とか着ていたら寒々しいが、背景が海であれば大丈夫。加えて単純に華やかにできるし、雰囲気を作ることができる。これでN→SRやR→SRは出世したということが明確に違いをつけて表現できる。渋谷凛→[ニュージェネレーション]渋谷凛の変化が分かりやすい。SR昇格にあたって、解像度が引き上げられ塗りが複雑化されている。元々がNのカードとRのカードの違いは、それほどはっきりしていないが、Rのほうがキャラ付けが強烈な傾向にある(双葉杏諸星きらり神崎蘭子はいずれもR)。また、N+の衣装は複数人が同じものを着ていることがあるのに対し、R+はひとりひとり別であるということでも差をつけようとしたふしがある。では、N→Rや、N→N、R→R(後二者は昇格はしていないことになる。仮に再登場としておく)の場合を次に考える。このとき、形式で明確な差はつけられないのだから、アイドル自身の姿で差を付けなければならない。それはアイドルの体とアイドルがまとう服、すなわち、衣装とポーズである。衣装はテーマを持つことがある。たとえばクリスマスイベントで再登場する場合はクリスマスっぽい衣装を着る。[パジャマパーティー]のコンプガチャで再登場する場合は、パジャマや、パジャマっぽい衣装を着る。この場合は昇格というよりも、別の角度から見るといったほうが適切だろう。では、テーマにあてはめるのではない場合の、N→Rの昇格はどうだろう。実はこの場合がもっともおもしろいと見ることができる。なぜなら形式に頼ることなく同じキャラの絵で上下をつけるという難しい課題を背負わされるからだ。平等なものに差をつけという課題が純粋な形で投げられ、よい絵の一般的解が示唆される。ひとつの答えは、複雑にすること、である。衣装の複雑性をどのように計るかはいくつかの方法があると思うが、ヒラヒラと、あるいはゴテゴテした衣装などはそう呼べるだろう。たとえば[フラワーブーケ]相葉由美+。ポーズは正面顔を単純なものとして、そこからのズレを見る。この時は画力があった方がいいかもしれない。道明寺歌鈴のようにキャラと服装が強く結びついている場合は、着替えさせにくいために、巫女服(R)→巫女服(衣装R)→巫女服(SR)という風に連投になったりする。そしてSR+は複雑化した巫女服になるわけだ。
ほんとは一枚一枚のバランス調整をエミュレートしてみたいけど、とりあえずこんなところで終わる。
ちなみに以上の文章は依然5M Vol.4という同人誌に載せたものとだいたい内容が同じで、NやRが美少女ゲームの立ち絵に、SRが一枚絵にそれぞれ対応している。