虚構機関

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

むかし、筒井康隆の編んだ70何年かの「SFベスト集成」というアンソロジーを(リアルタイムではなく)読んだことがあるが、その中で一番印象が強かったのは永井豪の「ススムちゃん大ショック」という漫画で、その内容は、ある日突然世の中の大人たちが子供を殺し始めた。それは大人たちから子供を育てる本能が消えたためだった。ススムくんは笑いながら子供たちを殺す先生や警官からなんとか逃げて下水道に隠れたが、大人たちが変わってしまったことを認めつつも自分のママだけはきっと自分を殺したりしないと信じて家に帰る。で、最後のページではママが包丁を洗っていて、そばにはススムの首が転がっていた。というホラーで、これを読んだ後は怖くなって自分も親に殺されないか、みたいなことを考えてしまった。この話は子供のころに読まないと怖さがわからないので、読んでおいてよかった。今読んだら自分は子供を殺す側に入るかもしれないから。あとは藤子不二雄の「ヒョンヒョロ」とか。これもホラーだった。つまり漫画しか覚えていないのだが。筒井の解説で山田正紀がデビュー(!)してあまりにもすごいので長編作家がビビッている、みたいなことが書かれていたような。
で、この「虚構機関」という本はかつての筒井の志を受け継いで年度別のアンソロジーを編もう、という企画らしい。いいのは「The Indifference Engine」あたりかな。「まだ月曜日なのに」「機嫌悪くなったのどうしてくれるんだよ」といいながら血を吹き上げる孔にぎりぎりと鉛筆をねじ込むっていうところがすごくいい。脱力系SF作家の本領発揮。