現在、世界のほとんどの国で
市場経済が採用されている。数少ない
社会主義を掲げる国である中国でさえその実態は資本主義・
市場経済そのものである。このような時代において、市場による自由な取引は極めて「自然」なことに見える。しかしそれは決して普遍的にそうであったわけではない。かつては取引は小さな共同体の中に限られていた。それを全国、ひいては世界を単一の市場とする特殊なシステムに変えていったのは
産業革命以後の技術の発展であるが、そこでは国家による介入が欠かせない役割を果たしていた。「自由放任」主義はそのあとにのみ成立する。ここでポランニーが示しているのは自由が国家権力の介入によって存在するという逆説である。そしてその自由の作為性は現在の
金融危機のような時代にあって表面化する。
GMのような
市場経済の象徴的企業が保護を求めて国家に泣きついているのだ。明らかになったことはそもそも自由が存在しなかったということだ。ここで自由を求めることをやめて力による支配を進めるのが
ファシズムである。しかし本書の最後でポランニーが提起しているもうひとつの可能性は、それでも自由を求めて社会を改良し続けようとすることだ。おそらくそれは本当の意味で「
社会主義」と呼ばれる。